お題




1 星を浴びる02時 /ヘキ

「卿の目はどちらが本物だ?」
情事の後、腕の中の彼が上気した頬もそのままに言った。
普段ならば決して言わないようなことも、このときだけは幾分挑発的に言うのだった。
答えを探しながら、ロイエンタールは無意識に彼のうなじをなぞる。灰色の瞳がくすぐったそうに細められた。
本物。
質問の意図は窺い知れないが、そう問うた彼こそ”本物”だった。太陽も月も彼を照らすために発光しているのだとおもう。ゆるぎなく正しい存在。
ロイエンタールは金色にふち取られた灰色を覗きこんで言った。
「俺の目のどちらに卿は映っている?」
「両方だ。それがどうした?」
ロイエンタールは莞爾とする。
「では両目とも本物だ。本物の卿を映しているからな」
ミッターマイヤーは少し目を見張ったのち、満足気に笑った。



2 想いが先走る05時 /ヘキ

明日も早い、とか。仕事が溜まりに溜まっている、とか。
家で帰りを待っているから、とか。
彼は必死に拒絶している。俺との関係を。
それでも結局は言いくるめて飲みに行く。
彼は泥酔する。奥方が心配するだろう、と言えば、だから家に帰りたくないと言う。
俺は据え膳は頂く主義だ。(あるいは彼もそれを希んでいるのではないか?)
翌朝どころか、行為の直後に彼は自己嫌悪で死にそうになっている。
それでも俺は彼を手放せないのだ。想いばかりが募って口には出せないが。



3 鏡の自分に問い質す07時 /ヘキ

明日も早い、とか。仕事が溜まりに溜まっている、とか。
家で帰りを待っているから、とか。
形ばかりの拒否をする。
おれは嫌だったのに、なんて無責任に後悔するために。
彼には悪いことをしている。こんなずるい男なんてさっさと捨ててくれて構わないのに。
洗面所で鏡をのぞくと、首筋に明らかな情事の痕が残っていた。
それをみて眉を寄せる。(間違っても彼の行為に対してではない。)
おれは罪悪感とか節操といった類いのものが欠如しているのではないか?
疑惑は排水口へ流すことにした。



4 檄を飛ばす11時

「ファイエル!」
右手と共に号令を出せば、既に漆黒とは程遠い宇宙に新たな閃光が散る。
閃光のたびに誰かが死んでいく。
初陣の少女もいたかもしれない。幼子の父もいたかもしれない。引退間際の老兵も。
これだけ人を殺したらおそらくヴァルハラには行けまい。
だがあの閃光を見るたびに心の奥がわななく。
青や緑かもしれない血はかつてないスピードで全身を駆け巡る。
俺は生きているのだ。



5 光合成の14時 /ヘキ

うららかな光さす午後、手を伸ばした。夢の中で。
もう二度と届くはずのない彼の肌は確かにあたたかかった。
失ったぬくもりの大きさに絶望して、目が覚めた。
この世界はいまだに光があふれている。



6 パレードが来た15時 /ヘキ

「まったく卿は」
ミッターマイヤーは嘆息した。そしてじろりと睨めつける。
執務中に訪ねてきて、何事かと思えば「今夜一杯どうだ」だと?
「いい酒が手に入ったんだ。卿が以前言っていた」
同僚は彼には珍しいふてくされた様子である地名を言った。
「なんだと?」
「卿があんなにも執心していたから・・・」
ロイエンタールはすっかりへそを曲げてしまったようだった。
ミッターマイヤーは手のひらを返して彼をなだめる。
「いや、ロイエンタール、悪かった!嬉しいよありがとう!」
彼はちょっと笑って「まったく卿は」と言った。



7 電波に隠れる19時 /ヘキ

「どうしておれたちは友人ではいられなかったのか」
「では卿は友人のままでいられたと?」
「当然だ」
「ならばなぜ拒まなかった?―――今も、嫌ならばこの手を離せばよいものを」
「・・・卿のぬくもりを知ってしまっては、どうして離れることができようか」



    好き ってことさ。



9 瞳が重なり合う23時 /ヘキ

あの灰色があんなにも艶めく瞬間を、
他の誰が知っていると言うのだ。



未:8 月が跳ねた21時
  10 漣を聴く24時


配布元:Logh@時刻的10のお題
(すいませんが配布元様がどちらだったか不明です。ごめんなさい。お心当たりのある方は教えていただけると嬉しいです)